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友達の嘘で捨てられた私、今さら愛されても遅すぎる!
母が突然心臓発作を起こし、毎日の治療費が天文学的な額になってしまった。 慌てて彼のもとを訪ね、どうにか助けてもらえないかと頼んだ。だけど、返ってきたのは冷たい一言だった。 「やっぱり、お前が俺と付き合ったのは金が目当てだったんだな」 彼はあざ笑うように言葉を続けた。 「お前とあの必死に媚び売ってくる女たちに何の違いがある?結局、同じ程度に浅ましいんだ!」 その後、容赦なく私を追い出した彼の背中を見送りながら、胸が張り裂けそうだった。 その数日後、全てを知った彼は、無制限に使えるというカードを私の手に押し付けてきた。 「夏陽(なつひ)、パスワードはお前の誕生日だ」 しかし私はカードを床に叩きつけ、その場を後にした。もう振り返ることはない。
Chapters (1)
第1章
母が突然心臓発作を起こし、毎日の治療費が天文学的な額になってしまった。
慌てて彼のもとを訪ね、どうにか助けてもらえないかと頼んだ。だけど、返ってきたのは冷たい一言だった。
「やっぱり、お前が俺と付き合ったのは金が目当てだったんだな」
彼はあざ笑うように言葉を続けた。
「お前とあの必死に媚び売ってくる女たちに何の違いがある?結局、同じ程度に浅ましいんだ!」
その後、容赦なく私を追い出した彼の背中を見送りながら、胸が張り裂けそうだった。
その数日後、全てを知った彼は、無制限に使えるというカードを私の手に押し付けてきた。
「夏陽(なつひ)、パスワードはお前の誕生日だ」
しかし私はカードを床に叩きつけ、その場を後にした。もう振り返ることはない。
第1話
「翔真、1000万円貸してくれない?」
賑やかだったバーの個室が、一瞬で静まり返る。
彼の顔が見る間に険しくなり、深い瞳がまっすぐ私を射抜く。
「1000万?何に使うんだ?」
口を開きかけた私を遮るように、彼の隣に座っていた桐生翔真(きりゅうしょうま)の幼馴染の早乙女美織(さおとめみおり)が噴き出すように笑い声をあげた。
「ほらね、私が言った通りだったでしょ?こういう子って、一見可憐なふりして、結局は金を引き出すことばかり考えてるのよ。翔真、まだ信じられない?」
美織の声が続く。
「真実の愛だとか言ってたけど、ほらね。結局、金が大事なんじゃない」
その上、彼女は得意げに私を嘲笑う。
私はただ黙って翔真を見つめる。彼は美織の言葉を黙って聞いているだけで、視線ひとつ動かさない。
翔真の反応を見た周りの人たちは、目に驚きの色を浮かべていた。
美織のこともあって、この界隈の人たちはみんな私を嫌っている。
みんな、私が美織の元のポジションを奪ったと思っているのだ。
図々しくも自分にふさわしくない場所に入り込んだと見られている。
普段は翔真が私をしっかり守ってくれるから、みんな表向きには「お義姉さん」と気軽に呼んでくれる。
でも今日は翔真が何も言わないのを見て、みんな大胆になり始めた。
「七瀬さん、よくもまぁそんな大金を要求するもんだな」
「桐生さんの金は湯水のように湧いてくると思ってんのか?」
最初に口火を切った誰かの後を追うように、他の人たちも口々に言い始める。
「だからさ、貧乏人となんか付き合うと大変なんだよな。結局、俺たちが救済隊みたいになる」
「特に、見た目無害そうな奴ほど要注意だぜ。金せびる時だけは容赦ないからな」
「七瀬さん、銀行強盗でもやったほうが早いんじゃないか?」
中には下品な冗談を口にする者もいた。
「いっそ俺のところに来ない?二百万なら出すけど、どうだ?」
翔真はただ眉をひそめるだけで何も言わない。冷たい沈黙が空気を支配している。
そんな中、美織がわざとらしく「あらあら」と声を上げた。
「この子、ただお金が欲しいだけみたいじゃない。売り物扱いなんてかわいそうだから、あんまり追い詰めちゃダメよ?」
その顔には嘲笑の色が隠しきれていなかった。
まるで道化師のように、私は周りの視線の中で晒し者にされていた。
嘲笑と侮蔑が飛び交う中、翔真はただ静かに座っているだけだった。まるで舞台を見物している観客のように、冷めた目で私を見ている。
それが、どれほど胸を抉ったかなんて、彼はきっと知らない。
だけど、立ち止まって泣いている時間なんて、私にはない。お母さんが手術を受けるには、このお金が必要だから。私は震える声で、必死に言葉を絞り出した。
「翔真......お願い。お母さんが病気なの。どうしてもこのお金が必要なの!」
静まり返った部屋に響く私の声。それを遮るように、美織が鼻で笑った。
「七瀬さん、そんなに嘘をつきたいなら、もう少しマシなネタを用意したら?その言い回し、どこかのサイトで見たんじゃないの?」
「違うの!」私は慌てて首を振る。「お母さんが心臓病で、急いで手術をしないと......!」
最後まで言い終わる前に、翔真が立ち上がった。そして、私の目の前まで来ると、片手で顎を掴み、低く冷たい声を落とした。
「夏陽、嘘をつくならもっと上手にやれ。年明けにお母さんの健康診断の報告書、俺のオフィスにあったよな?」
深い瞳の中に浮かぶのは、疑いと怒り。そして、彼の言葉は続く。
「心臓病?そんな作り話をしてまで金を引き出そうとするなんて、大した根性だよ」
「俺はお前のことをこれほどまでに大切に思ってきた。それなのに、お前にとって俺はただのカモ、金を引き出すための機械だったのか?」
何度も振り払おうとしたけれど、彼の手はびくともしない。冷たい瞳に射すくめられ、恐怖が胸を締め付ける。
「違う、違うの!私は......」
「夏陽、お前には失望したよ」
そう吐き捨てた彼は、私をテーブルの方へ乱暴に突き飛ばした。
額が机の角にぶつかり、鈍い痛みが走る。次の瞬間、じわりと温かい感触が額から流れ落ちた。
美織が小さく悲鳴を上げる。「翔真!そんなに強くしなくてもいいじゃない!一応女の子なんだから!」
彼は美織の言葉には目もくれず、冷酷な声で言った。
「1000万なら貸してやる」
その一言に、私は微かな希望を抱いた。
しかし、次に飛び出した彼の言葉に、その希望は粉々に砕かれる。
「ただし、ここにある酒を全部飲み干したらな」
その瞬間、私は凍りついた。
彼は知っているはずだ。私が酒を飲めないことを。
第2話
昔、翔真は私が酒にアレルギーがあることを知っていた。
私がいる場では、必ず事前にジュースを用意してくれていた。
付き合っていた4年間、そんな彼の気遣いが途切れたことは一度もなかった。
そんな彼が、今は目の前で冷たく私に言い放つ。
「飲め。全部だ。それがここでのルールだ」
その瞬間、私は彼が全く知らない人に思えた。
でも、どうしてもお金が必要だった。お母さんを救うために。
私は小さく息を呑み、震える声で答えた。
「......わかった」
瓶のフタを開け、一気に流し込む。一本、また一本。
喉を焼くアルコールの感覚、胃が悲鳴を上げる。何本飲んだか、何を飲んだか、もう分からない。
やがて吐き気をこらえきれなくなり、泣きながら飲み続けた。顔に伝うのが涙なのか酒なのか、自分でも分からない。
周りの笑い声が聞こえる。私の苦しみが彼らの娯楽だと、そう思ったら、胸が張り裂けそうだった。
ようやく最後の一本を飲み干し、朦朧とした意識の中で彼を見つめた。
「これで......貸してくれる?」
翔真は冷たい目で私を見下ろし、軽蔑するように言い放った。
「お前、あの売女たちと何が違う?同じくらい浅ましいな」
その言葉を最後に、彼は私を追い出すように警備員を呼びつけた。
酒場の外に放り出された私は、地面に伏せたまま動けなくなった。
夜空がやけに黒く感じられた。
翔真、四年間の付き合いで、私はそんなに信用されていなかったの?
その夜、私は酒に酔って意識を失い、アレルギーで危うく命を落としかけた。
幸い、通りすがりの善意ある人が救急車を呼んでくれたおかげで、一命を取り留めた。
次に目を覚ましたのは、病院のベッドの上だった。
目の前には、母の主治医である九条颯(くじょうはやて)がいた。
彼は険しい顔で私を見下ろし、怒ったように言う。
「お酒がダメなことを知っているのに、どうして飲んだんですか?命を投げ出してどうするつもりですか?
君が倒れたら、君のお母さんを誰が支えるんですか!」
その言葉に、私は何も言い返せなかった。ただ、申し訳なさそうに俯き、小さく「ごめんなさい」と呟いた。
すると彼はため息をつきながら私の頭をポンと叩いた。
「大丈夫。全部乗り越えられるから」
その優しさに、私は小さく頷いた。彼はそれを確認すると、ようやく安心したように部屋を後にした。
ぼんやりと次にどうすればいいのか考えていた時、携帯が震えた。
画面に映るのは、美織からのメッセージだった。
内容を確認した瞬間、私は布団を跳ねのけ、急いで病院を飛び出した。
体調は最悪だったけれど、それでも行かなければならなかった。
指定されたカフェに到着すると、美織は余裕たっぷりの態度で私を待ち構えていた。
「1000万円を貸してくれるの?」
彼女はコーヒーを一口飲み、にやりと笑った。
「いいわよ。ただし、一つ条件がある」
その条件がどんなものであれ、私は飲むしかないと思った。
命がかかった母のことを考えれば、10個でも引き受ける覚悟だった。
「二度と翔真の前に現れない。それが条件よ」
彼女はそう言うと、バッグからカードを取り出し、手の中でくるくると回して見せた。
目の前には、瀕死のお母さんと、かつて愛した男。
どちらかを選べと言われて、私には迷う余地なんてなかった。
震える手でカードを掴もうとした瞬間、目にも止まらぬ速さでそのカードが奪われた。
驚いて顔を上げると、そこにいたのは怒りに燃える翔真だった。
「どうして......ここに......?」
私の驚きをよそに、彼は美織の手から奪い取ったカードを無造作に二つに折り、その破片を床に叩きつけた。
「夏陽、俺もお前を見くびってたよ。
前は上手く猫を被ってたけど、たかが1000万のためにその仮面を捨てるとはな」
その瞳に宿る怒りと冷笑。私は何も言い返せなかった。
「どうせなら、もっと時間を稼げば良かったんじゃないか?
そうすれば、2000万でも喜んで出してたかもしれないのに」
冷たい言葉を浴びせる彼を、私はただ見つめることしかできなかった。
床に落ちたカードの破片を拾おうと手を伸ばしたその瞬間、彼の革靴が私の手を遮るようにカードを踏みつけた。
「俺は金のために手段を選ばない女が一番嫌いなんだ。
お前が好きなのは金だろ?でも、残念だったな。俺は一銭たりともお前には渡さない」
さらに彼は美織に向き直り、冷たく言い放った。
「お前ら、誰一人として彼女に金を渡すな。それができないなら、桐生家を敵に回すことになる」
言葉を終えると、彼は連れてきた連中を引き連れてその場を去っていった。
破れたカードの破片を見つめながら、私はその場に座り込んで動けなくなった。
何もかもが終わった。お母さんを救う最後の手段すら失った絶望が、全身を包み込んでいく。
涙が頬を伝い、床に落ちていく音がやけに大きく聞こえた。
そのとき、不意に携帯が鳴った。
ディスプレイに表示された名前は九条颯。お母さんの主治医だった。
「七瀬さん、すぐに病院に来てください。
お母さんの容体が急変しました」
その一言で、意識が現実に引き戻された。
私は無理やり体を立ち上がらせ、ふらつきながら病院に向かった。
何とか病院にたどり着くと、颯が私を待っていた。
彼は静かに首を横に振る。
その後ろには、冷たく静まり返ったお母さんの姿があった。
目を閉じたまま、もう二度と目を開けることはない。
第3話
私は全身から力が抜け、その場に崩れ落ちた。
九条さんは心配そうに私を支えながら、耳元で慰めの言葉をかけてくれる。
でも、その言葉は何一つとして頭に入ってこなかった。
昔、お母さんはこんなことを言っていた。
「私は別に、あの桐生家の子と付き合うのに反対じゃないよ。ただね、私たちは普通の家の人間だ。釣り合わない分、あんたがきっと苦労することになるだろうって、それだけだよ」
そのときの私は、翔真との甘い日々に溺れていて、お母さんの言葉なんて耳に入らなかった。
「お母さん、大丈夫だよ。翔真はすっごく優しいんだから。絶対に私を悲しませたりしないって、ちゃんと約束してくれたもん」
だけど今、私の胸に深く刺さっているこの痛みを与えたのは、他でもない翔真だった。
男の約束なんて、所詮、屁みたいなものだったんだ。信じた私が馬鹿だった。
冷たくなったお母さんの体を抱きしめながら、私は震える声で囁いた。
「お母さん、私、もう翔真とは会わないよ。お母さんの言うこと、ちゃんと聞くから」
「だから、お願いだから、もう一度目を開けてよ......」
だけど、返ってくるのは虚しい沈黙だけだった。
どれだけ泣いただろうか。やっとの思いで気持ちを落ち着け、火葬の手続きを進めようとした。
しかし、そこで知らされたのは、費用を全額支払わなければ遺体を引き渡せないという現実だった。
手元のカードを思い出す。残高はほとんどゼロだ。
情けなさと悔しさで、心の中で自分を何度も責めた。
分割払いができるか尋ねようとしたその瞬間、九条さんが横からカードを差し出した。
「これで払ってください」
慌てて彼の手を止める。
「九条さん、もうこれ以上迷惑をかけられません。自分でなんとかします!」
けれど、彼は私の言葉を遮るように言った。
「先にお母さんを安らかにしてください。それが何より大事なことでしょう」
掴んだ彼の手を、私は力なく放した。
今は、彼の助けを借りるのが最善の道だと理解していたから。
墓地の費用も、彼が全て支払ってくれた。
私にできることは、早く仕事を見つけて、彼に借りたお金を返すことだけだった。
手続きが終わり、母の骨壺は静かに墓地へと運ばれた。
雨がぽつぽつと降り始め、空もどんよりと曇っている。
最後のお別れに立ち会ったのは、私と九条さんだけだった。
スタッフが丁寧に骨壺を墓の中へ納める。
蓋が閉じられ、土がかけられる。
生前、お母さんが一番望んでいたのは、私が幸せな結婚をすることだった。
でも、その願いが叶う前に、お母さんは旅立ってしまった。
「これからどうするんですか?」
九条さんが問いかけてくる。
私は迷いなく答えた。
「ここに残ります」
彼は少し驚いたようだった。
「ここに?どうして......」
「この墓地、求人を出してました。ここで働こうと思います」
翔真との日々に夢中だったあの頃、もっと時間があると思い込んでいた。
そのせいで、お母さんとの時間を大事にすることを忘れてしまっていた。
だから、今度はずっとそばにいたい。そう決めた。
九条さんは反論することなく、ただ優しく私の肩に手を置いた。
「分かりました。君がそれでいいなら、それがお母さんへの何よりの供養でしょう」
葬儀が終わり、九条さんは私を家まで送ろうとした。
でも、私は俯いて小さく首を振った。
お母さんがいなくなって、家なんてもうないのだ。
結局、翔真との家に寄ることにした。そこには、まだ私の荷物が残っていたから。
きっと彼はまだ帰っていないだろう。そう思いながらドアを開けた私の目に飛び込んできたのは、信じがたい光景だった。
翔真が、美織とソファの上で抱き合っていたのだ。
彼は私を見て一瞬固まり、美織を慌てて突き放す。
「夏陽、違う!これはお前が考えてるようなことじゃない!」
言い訳めいた声を上げた彼だったが、すぐに眉をひそめて私を睨む。
「それより、お前......何しに来た?」