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やまない雨
私、朝倉咲(あさくら さき)は、結婚式の前日、高瀬直樹(たかせ なおき)との子をひそかに堕ろすため、病院を訪れた。 廊下で顔なじみの女性医師と鉢合わせると、驚いたように声をかけられた。 「朝倉さん?先週は、ウェディングドレスでお腹が目立たないか心配なさっていたのに……どうして急に?高瀬社長は、ご一緒じゃないんですか?」 私はうつむき、わずかに膨らんだお腹を撫でた。心はぽっかりと穴が空いたように虚しかった。 「あの人は忙しいみたいで。下の階で、自分の継母の妊婦健診に付き添ってるんです」
Chapters (1)
第1章
私、朝倉咲(あさくら さき)は、結婚式の前日、高瀬直樹(たかせ なおき)との子をひそかに堕ろすため、病院を訪れた。
廊下で顔なじみの女性医師と鉢合わせると、驚いたように声をかけられた。
「朝倉さん?先週は、ウェディングドレスでお腹が目立たないか心配なさっていたのに……どうして急に?高瀬社長は、ご一緒じゃないんですか?」
私はうつむき、わずかに膨らんだお腹を撫でた。心はぽっかりと穴が空いたように虚しかった。
「あの人は忙しいみたいで。下の階で、自分の継母の妊婦健診に付き添ってるんです」
第1話
医師は驚いて目をしばたたき、返す言葉も見つからない様子だった。ちょうどそこへ、調査を頼んでいた探偵が書類を手に上の階から駆け下りてきた。
「朝倉さん、調べがつきました。例の女性のお腹の子は、高瀬社長のお子さんです!」
息を切らす探偵の言葉に、医師はますます目を丸くした。けれど、その驚きはすぐに気まずさへと変わり、慌てて半歩下がると、ぎこちなく笑った。
「あの、朝倉さん……私は回診がありますので、これで失礼しますね」
そちらには構わず、私は受け取った親子鑑定書を開き、最終ページの結論へ目を落とした。
【被検者が胎児の生物学上の父親であることを支持する。父権確率99.99%超】
「ありがとうございます。報酬は倍額、振り込んでおきますね」
探偵は何度も礼を言っていたが、言葉を返す気力すら残っていなかった。お腹を抱えるようにして廊下の突き当たりまで歩き、大きな窓の前でぼんやりと立ち止まる。
見下ろすと、1階の庭に直樹と高瀬莉奈(たかせ りな)の姿があった。健診を終えたばかりの彼女を支え、直樹は楽しげに話しながら歩いている。莉奈は半ば彼の胸に身を預け、笑い合う2人は、どこから見ても仲睦まじい夫婦そのものだった。
見ているだけで、全身が震えるほど苦しい。それでもまだ未練を断ち切れず、最後にもう一度だけ直樹を信じたいと思ってしまう。
私は2人の姿を見つめたまま、直樹に電話をかけた。
着信に気づいた彼は、スマホの画面を見るなり煩わしそうに眉をひそめ、通話を切ってしまった。もう一度かけても同じだった。これで最後にしようと思った電話に、ようやく応答があった。
「咲、どういうつもりだ?忙しいって何度も言ってるだろ!しつこく電話してきて、一体何の用だよ」
こちらが口を開くより早く、苛立ちをぶつけるような声が耳に飛び込んでくる。私は泣きそうになるのをこらえ、どうにか言葉をつないだ。
「直樹、少し体調が悪いの。健診に付き添ってもらえないかな……」
電話の向こうで、うんざりしたようなため息が漏れた。
「具合が悪いなら医者に診てもらえよ。家政婦に付き添ってもらえばいい話だろ。俺は毎日、会社のことで手いっぱいなんだ。妊娠してるからって、いつもお前に構ってやれるわけじゃない」
「私……」
まだ何か言おうとしたときには、すでに電話は切られていた。
窓の下では、今しがた私を怒鳴りつけていた男が、莉奈に向き直った途端、優しい顔に戻っている。再び彼女を抱き寄せ、ゆっくりと散歩を続ける姿を見ていたら、胸がむかつき、今にも吐きそうになった。
寒気に身を震わせ、ふと顔を上げると、ガラス窓には目を真っ赤に泣き腫らした妊婦が映っていた。
なんて、かわいそうな人。
背後から近づいてきた看護師に声をかけられるまで、私はそこに立ち尽くしていた。
「朝倉さん、手術のお時間です。まだ迷っていらっしゃるようでしたら、予約日の変更や取り消しもできますよ」
その言葉にはっと我に返り、頬の涙を乱暴に拭って振り向いた。
「いいえ、もう決めました。案内してください」
この子も、直樹も、もういらない。
手術はほどなく終わったが、麻酔が切れていくにつれ、鈍い痛みが強くなってきた。付き添いは誰も連れてきていない。壁に手をつきながら、ひとりで少しずつ出口へ向かっていると、廊下の角に差しかかったところで、私の名前を呼ぶ声が響いた。
「咲さん!」
振り返ると、やはり、そこにはあの女がいた。
直樹の継母、莉奈だった。
第2話
「やっぱり咲さんだわ。どうして病院に?咲さんもつわりか何か?」
早足で近づいてくる莉奈の後ろから、直樹が慌てて追いかけてきた。
「莉奈、上着を取りに行ってる間にいなくなるから、心配したよ。病院内は冷房が効きすぎてるから、ちゃんと羽織ってないと。体が冷えたら困るだろ」
心配そうでいて、どこか甘やかすような口ぶりだった。そこでようやく私に気づいたらしく、一瞬動きを止めると、後ろめたさを隠すように先に尋ねてきた。
「どうしてひとりで来たんだ?誰も連れてこなかったのか」
黙って見つめていると、居心地が悪くなったのか、直樹は渋々弁解を始めた。
「莉奈の健診のことは数日前から約束してたんだよ。言ったらまた変に勘ぐるだろ?前にも同じことで何度も揉めたじゃないか。
明日は結婚式なんだし、波風を立てたくなくて黙ってただけだ」
「ふうん」
私が気のない返事をすると、直樹はこの話はこれで済んだと思ったらしい。ごく自然な手つきで莉奈に上着を着せ、ボタンまで1つずつ丁寧に留めてやった。
莉奈は首をかしげ、憐れむような、それでいて得意げな目で私の青ざめた顔を眺めている。やがて、わざとらしく直樹をたしなめた。
「直樹ったら、何してるの。咲さんがいるんだから、先に着せてあげなきゃ。どうして私に着せるのよ」
「いいんだよ、咲は丈夫だから。それに、お腹にいるのは俺の……」
顔も上げずに言いかけて、直樹はぴたりと口をつぐんだ。はっとしたように顔色を変え、私をちらりと見て、慌てて言い直す。
「俺の……弟なんだから、大事にしないと」
これ以上、見ていたくなかった。外では雨が降り始めていて、この様子では、これからもっとひどくなりそうだ。
「まだほかに検査があるから、先に行くわね」
適当な口実をつけて立ち去ろうとすると、不意に直樹に引き止められた。振り返ると、私のバッグに入っている傘を指さし、当然のように言う。
「その傘、今使わないなら先に貸してくれ。外はかなり降ってるし、車に乗るときに莉奈が濡れたら困るんだ。どうせ夕立だろ。お前の検査が終わる頃にはやんでるさ」
直樹を見つめているうちに、目の縁がじんわりと熱くなってきた。
「莉奈さんは妊婦だから気遣うのに、私はどうでもいいの?私だって、あなたの子を妊娠しているのよ」
かすれた声で問いかけると、直樹はまた泣くつもりかと言わんばかりに、苛立って手を振った。
「もういい、いらない。傘を貸してくれって言っただけで、いちいち面倒くさいな。莉奈はもともと体が弱いんだ。
お前は少しくらい濡れたって平気だろ。ひとりで健診に来られるくらい元気なんだから。いちいち突っかかるなよ」
直樹は莉奈を抱き寄せて歩き去った。その間も、ぶつぶつと文句をこぼしている。
「妊娠してから、何かにつけてヒステリーだ。もううんざりだよ」
わざと聞かせているとしか思えない声の大きさだった。私が傷つくと分かっていて言っている。
あふれかけた涙は引っ込み、目の奥がひりひりと痛んだ。悔しさと憎しみが押し寄せ、息をするのさえ苦しい。力の入らない足でどうにかベンチまでたどり着き、しばらく休んでから、先ほどの探偵に電話をかけた。
「前に撮ってもらった、あの2人の密会写真、データは残っていますか。5万枚、印刷してください。全部買い取ります。人を手配して、新居中に貼ってほしいんです」
そして、明日のためにもう1つ依頼した。
「写真を大型のクラッカーにも詰めておいてください。彼が私を迎えに来たら、お祝いの紙吹雪みたいに、一斉に打ち上げてほしいんです」
第3話
家に帰ると、直樹はすでに莉奈と夕食を済ませ、ソファに並んで恋愛ドラマを見ていた。しかも、ドラマの展開について楽しそうに語り合っている。
「俺がこの主人公なら、さっさと別れるね。よくそんなにぐずぐずしてられるな」
莉奈は甘えるように笑って直樹の肩にもたれかかると、何気ないそぶりで玄関に立つ私をちらりと見た。
「仕方ないわよ、このヒロインって、そういう女だもの。みっともなくしがみついて、いつまでも出ていこうとしないんだから」
その光景を見ていると、喉の奥が詰まったように苦しくなった。
以前、私がこのドラマを見ていたとき、直樹は通りかかっただけで文句を言ったものだ。
「音、下げろよ。うるさいな。よくこんなくだらないものを見ていられるよな。俺には無理だ」
今にして思えば、直樹はドラマが嫌いだったのではなく、私が嫌いだったのかもしれない。だから、私が見ているドラマにまでけちをつけていたのだろう。
ドアの音に気づいた直樹は、冷ややかな目を一度こちらに向けただけで、何も言わずにテレビへ視線を戻した。まだ傘のことで機嫌を損ねているらしい。
私は気づかないふりをして、ひとりでダイニングへ向かった。
食事の途中で、匂いにつられた莉奈がやってきた。
「咲さんのごはん、いい匂い。まだ残ってるかしら?私にも同じものをお願い」
家政婦は困った顔になる。
「申し訳ございません。奥様と咲様のお食事は、それぞれに合わせてお作りしておりますので、こちらは咲様の分しか……」
その言葉が終わらないうちに、直樹が大股で入ってきた。断りもせず私の前からトレーを取り上げると、そのまま莉奈のところへ運んでしまう。
「食事くらい遠慮するなよ。莉奈も子どもも、お腹をすかせたままじゃかわいそうだろ。咲、お前はあとで別のものを作ってもらえ。
莉奈が自分から食べたいなんて珍しいんだ。それに、一応は目上の立場なんだから、少しは譲ってやってくれよ」
空腹で胃がしくしくと痛む。私は直樹を見つめたまま、指の節が白くなるほど箸を握りしめたが、とうとうこらえきれずに食卓へ叩きつけた。
「高瀬家って、人の食べてるものを取り上げなきゃいけないほど、お金に困ってるの?お義母様にはずいぶん優しいのね。まるで明日結婚する相手は、私じゃなくて彼女みたい」
痛いところを突かれたように、直樹が声を荒らげた。
「咲、何を言い出すんだ!帰ってくるなり騒ぎ立てて。どこまでわがままなんだよ!」
莉奈はすかさず顔を覆い、肩を震わせて泣き始めた。いかにも傷ついたふうに見せながら、口では仲裁しようとする。
「違うの、咲さん。直樹と喧嘩しないで。全部、私が悪いの。妊娠してから、何を見ても食べたくなっちゃって……私はもういいから、咲さんが食べて。
3年も直樹を追いかけて、やっと付き合えたんでしょう?明日は結婚式なのに、私のせいで台無しにでもなったら……」
彼女が弱々しく振る舞うほど、直樹の目つきは険しくなっていく。莉奈を抱き寄せると、慰めるように言った。
「莉奈、泣くなよ。どうしてお前が謝るんだ。悪いことなんかしてないだろ」
それから私に向き直るなり、吐き捨てた。
「咲、お前が3年もしつこく追いかけてこなきゃ、付き合うことも結婚することもなかったんだぞ。これ以上莉奈に嫌がらせするなら、今すぐ式を取りやめるからな!」
莉奈は、そこで話が収まっては困るらしい。涙に濡れた顔を上げ、おずおずと直樹の袖を引く。
「直樹、もうやめて。咲さんはあなたが大好きだから、私に取られるんじゃないかって不安なのよ。明日、私が出ていくわ。2人の邪魔になりたくないもの……」
「出ていく?出ていくのは、あいつのほうだ!」
莉奈の言葉を遮り、直樹は私を鋭く睨みつけた。
「ここは俺の家だ。誰を住まわせるかは俺が決める。
咲、いい加減にしないと、明日の式は取りやめだ。お前も出ていけ!今すぐ莉奈に謝れ!」
第4話
外で激しい雷鳴が轟き、稲妻が辺りを白く照らした。
怒りで顔を歪める直樹と、その腕の中で勝ち誇っている莉奈を見ていたら、不意に笑いがこみ上げてきた。首を横に振り、声を立てて笑う私に、直樹は呆気に取られる。
「お前……」
その先を聞く気はなかった。ゆっくりと口元を拭い、バッグを手に立ち上がると、私は玄関の扉を開けて外へ出た。
直樹に貸さなかったあの傘を差し、降りしきる雨の中を歩いていく。体の半分は濡れてしまい、寒さで震えが止まらない。それでも、ここを去る足取りに迷いはなかった。
再び、稲妻が走った。
稲光にはっと我に返った直樹は、窓の外の激しい雨に、さすがに言いすぎたと思った。咲は身重なのに、こんな土砂降りの中を出ていかせてしまったのだ。
急に不安になり、連れ戻そうと身を離しかけた途端、莉奈がまた抱きついてきた。
「直樹、行かないで。また雷が鳴りそうで、怖いの」
直樹は、すがりつく莉奈の腕をそっと自分の体から離そうとしながら、優しくなだめた。
「大丈夫だよ、家には使用人が大勢いるだろ。咲は身重なんだし、ちょっと様子を見てくるだけだから」
ところが莉奈は、かえって強くしがみついた。涙を浮かべ、声を震わせる。
「もう私のこと、好きじゃないの?あなたのお父さんと無理やり結婚させられたときも、ずっと好きだったのはあなただけよ。
私のことは守るって言ってくれたじゃない。咲さんにあんなことを言われたのに、私を置いて、あの人を追いかけるの?」
直樹は長いことためらった末、外へ出るのをやめた。
「そんなことないよ。俺はここにいるから」
低い声で莉奈をあやしながらも、窓の向こうの雨をぼんやりと見つめていた。
莉奈が落ち着いてから、直樹は私に電話をかけたが、応答はなかった。続けて3回かけても出ないのを見て、莉奈は喜びを隠し、彼の胸に顔を寄せたまま探るように尋ねる。
「咲さん、そんなに怒ってるのかな。明日の式に来てくれなかったらどうしよう。赤ちゃんもいるのに……ひと言、ごめんって送っておいたら?」
直樹の目は落ち着かなげに泳いでいたが、口では強がりを崩さなかった。
「なんで俺が謝るんだよ。悪いのはあいつだろ。ここで謝ったら、つけあがるだけだ。
大丈夫だって。あいつがどれだけ俺に惚れてるか、お前も知ってるだろ?
明日は結婚式だし、今さら別れるなんて言えるわけないさ。どうせ新居で頭でも冷やしてるんだろ」
まるで自分に言い聞かせるような口ぶりだった。
けれど、直樹の予想は外れていた。
私が向かったのは空港だった。その頃にはもう飛行機に乗り込み、出発を待っていた。行き先はどこでもよかった。
カウンターでいちばん早く出発する便を尋ね、その場で航空券を買ったのだ。
午前3時20分。飛行機を降りると、メッセージが2件届いていた。
1件は探偵からだった。
【朝倉さん、すべて手配が整いました】
もう1件は、直樹から。
【さっきは少し言いすぎた。早く休めよ。明日の朝、新居へ迎えに行く】
どちらにも返事をせず、私は空港近くのホテルに入った。まぶたを開けているのさえつらくて、ベッドに横になるなり頭から布団をかぶり、そのまま眠りに落ちた。
朝7時、高瀬家では支度が整い、花婿に付き添う友人たちが賑やかに出発をせかしていた。
直樹だけは、いつまでも返信のないメッセージを眺め、不安を拭えずにいる。傍らの莉奈が気遣うように声をかけた。
「直樹、どうしたの?顔色が悪いわ。咲さんから、まだ返事が来ないの?」
首を横に振った直樹は、ふと莉奈のドレスに目を留め、眉をひそめた。純白の生地が光を受けてきらめいている。よく似合ってはいたが、これでは花嫁より目立ってしまう。
「莉奈、着替えてきてくれないか。今日は俺と咲の結婚式なんだし、その格好はちょっと……」
莉奈はうつむき、傷ついたような顔をした。いつものようにそうしていれば、直樹も折れると思ったのだろう。けれど、今度は友人たちが黙っていなかった。
「莉奈さん、そのドレスはさすがにまずいですよ。白は花嫁の色でしょう。それに、今日は新郎のお母さんとして出席するんですから、もう少し控えめな服にしたほうが……」
「そうですよ。今日は直樹と咲さんの式なんですから、花嫁より目立つのはまずいですって」
「取材も何社か入ってますし、直樹と腕を組むのもやめたほうが。写真を撮られて変な噂になったら、高瀬家の評判に関わりますよ」
口々にたしなめられても、直樹は上の空で庇おうとしない。莉奈は不満を押し殺して控えめな服に着替え、迎えの車に同乗した。
新居へ向かう途中、直樹の秘書から電話が入った。
「社長、警備員から聞いたのですが、午前2時か3時頃、大勢の人が新居の飾り付けに来たそうです。咲様からのご依頼だと言っていたようですし、咲様も新居にいらっしゃるのではないでしょうか」
直樹はようやく胸をなでおろし、口元に安堵の笑みを浮かべた。
ところが、いざ着いてみると、邸宅はひっそりと静まり返り、祝いの飾りすら見当たらなかった。結婚式当日の華やいだ気配など、どこにもない。
直樹は戸惑いながらも、警備員の話を思い出して無理に笑顔を作り、威勢よく手を振った。
「よし、花嫁を迎えに行くぞ!」
玄関には誰の姿もなく、半開きの扉は軽く押すだけで開いた。付き添いの友人たちも、そのままぞろぞろと中へ入る。
途端に、並べられた大型のクラッカーが立て続けに弾けた。
無数の写真が、花火のように宙へ広がる。抱き合う姿、キスを交わす姿、そればかりかベッドで肌を重ねる直樹と莉奈まで、鮮明に写し出された写真が雪のように降り注いだ。
直樹はその場に凍りつき、一瞬で顔から血の気を失った。
足元へ舞い落ちた1枚には、父の葬儀会場の控室で、夢中になって莉奈と口づけを交わす自分が写っている。その下に、小さな文字が添えられていた。
【直樹へ。お義母さんとのご結婚、おめでとう!】