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親友気取りと入籍した婚約者、離婚は却下よ
バレンタインデー当日。 市役所の戸籍窓口で働く私の前に、婚約者の藤堂英嗣(とうどう ひでつぐ)が、普段から「親友」面して彼にまとわりついていた宮内咲智子(みやうち さちこ)を連れて現れた。 彼は悪びれもせず、婚姻届を差し出して言い放つ。 「実乃里(みのり)、嫉妬すんなって。ゲームで負けただけだから。罰ゲームで1日だけ籍を入れるんだ。明日にはすぐ離婚届を出しに来るからさ」 咲智子は英嗣の白シャツを羽織り、わざとらしく唇を尖らせた。 「実乃里さん、手続きしてくれないなんて言わないよね?前から私のこと嫌ってるみたいだし……」 私は言葉を最後まで聞くこともなく、申請書へ迷わず力強く公印を振り下ろした。 「まさか。お気持ちはよく分かります。お二人は気心の知れた『マブダチ同士』で、ただゲームに負けただけですものね。 受理証明書をお渡ししますので、ロビー奥の記念撮影コーナーへどうぞ。ご結婚、おめでとうございます」 一切動じない私の態度に、英嗣は苦虫を噛み潰したような顔になり、咲智子の肩を抱いて立ち去った。 そして翌日。 再び市役所に現れた彼の首筋には、生々しいキスマークが残っていた。 私は冷ややかに微笑み、昨日施行されたばかりの最新法律――『少子化対策・円満婚姻継続支援法』を机の上にすっと滑らせた。 「申し訳ありません。昨日の午後、法改正がございまして。婚姻成立から6か月に満たないご夫婦の離婚申請には、半年間の冷却期間として、一度頭を冷やして考え直していただくことが義務付けられております。 どうしても離婚されたいのでしたら、半年後にまたお越しくださいね」
Chapters (1)
第1章
バレンタインデー当日。
市役所の戸籍窓口で働く私の前に、婚約者の藤堂英嗣(とうどう ひでつぐ)が、普段から「親友」面して彼にまとわりついていた宮内咲智子(みやうち さちこ)を連れて現れた。
彼は悪びれもせず、婚姻届を差し出して言い放つ。
「実乃里(みのり)、嫉妬すんなって。ゲームで負けただけだから。罰ゲームで1日だけ籍を入れるんだ。明日にはすぐ離婚届を出しに来るからさ」
咲智子は英嗣の白シャツを羽織り、わざとらしく唇を尖らせた。
「実乃里さん、手続きしてくれないなんて言わないよね?前から私のこと嫌ってるみたいだし……」
私は言葉を最後まで聞くこともなく、申請書へ迷わず力強く公印を振り下ろした。
「まさか。お気持ちはよく分かります。お二人は気心の知れた『マブダチ同士』で、ただゲームに負けただけですものね。
受理証明書をお渡ししますので、ロビー奥の記念撮影コーナーへどうぞ。ご結婚、おめでとうございます」
一切動じない私の態度に、英嗣は苦虫を噛み潰したような顔になり、咲智子の肩を抱いて立ち去った。
そして翌日。
再び市役所に現れた彼の首筋には、生々しいキスマークが残っていた。
私は冷ややかに微笑み、昨日施行されたばかりの最新法律――『少子化対策・円満婚姻継続支援法』を机の上にすっと滑らせた。
「申し訳ありません。昨日の午後、法改正がございまして。婚姻成立から6か月に満たないご夫婦の離婚申請には、半年間の冷却期間として、一度頭を冷やして考え直していただくことが義務付けられております。
どうしても離婚されたいのでしたら、半年後にまたお越しくださいね」
第1話
バレンタインデー当日。
手元の書類を整理していると、カウンターがコンコンと2度叩かれた。
「実乃里、怒るなよ。ただの罰ゲームなんだからさ」
顔を上げると、5年付き合っている婚約者の英嗣が立っていた。
隣には、彼の「マブダチ」を気取って普段からまとわりついている咲智子が、ぴったりと寄り添っている。
彼女は親しげに英嗣の腕にしがみつき、明らかにサイズの合わないメンズの白シャツをだぼっと羽織っていた。
見覚えがある。
先週、私が英嗣の誕生日にプレゼントしたばかりのシャツだ。
英嗣は媚びるような薄笑いを浮かべ、窓口の隙間から婚姻届を滑り込ませてきた。
「ゲームで負けちゃってさ。咲智子と1日だけ入籍する羽目になったんだ。安心してくれよ、明日の朝イチで離婚しに来るから」
咲智子は彼の肩に頭を預け、嘲るようにくすくすと肩を揺らす。その瞳には隠しきれない挑発の色が宿っていた。
「実乃里さん、まさかそんな器の狭いこと言って、手続きを突っぱねたりしないよね?私たちマブダチ同士だし、ただのお遊びなんだから本気にしないでよ」
差し出された書類を受け取る私の指先は、冷たく強張っていた。
目の前に並ぶ男女。
一人は、生涯を誓い合ったはずの恋人。
もう一人は、「妹以上に大切なダチ」だと彼が言い張ってきた女。
その二人がバレンタインの真っ昼間に、私自身の手で婚姻届を受理させようとしている。
あまりにも滑稽で、吐き気すら覚える茶番だ。
同僚たちからの探るような視線が突き刺さり、後ろに並ぶカップルのひそひそ話が耳に届く。
居心地の悪さを覚えたのか、英嗣はいらだちを隠さずに急かしてきた。
「実乃里、早くしてくれ。終わったらすぐ行くから」
咲智子はあてつけのように彼の肩へ頬を擦り寄せ、声を出さずに口元だけを動かした。
――昨日の夜、彼は私のものだったよ。
深く息を吸い込み、胸の底からせり上がる不快感を押し殺す。
そして顔を上げ、窓口用の完璧な営業スマイルを作った。
「かしこまりました。規定に従い、お手続きを進めさせていただきます」
婚姻届に目を通し、記入漏れや不備を手際よく確認していく。必要な訂正箇所を淡々と案内し、事務的に筆を走らせた。
すべての手順において、非の打ち所がない手際を貫く。
まるで、どこにでもいる赤の他人の申請を処理しているかのように。
あまりに平然とした私の態度に、二人は当てが外れたようだった。
英嗣は眉をひそめ、私が取り乱しもせず聞き分けよく応じていることに、いらだちを募らせている。
デスクに置かれた朱肉へ手を伸ばし、重みのある公印を握りしめた。
――ダンッ。
乾いた音がフロアに響き渡り、鮮やかな朱印が紙面へ深く刻まれる。
仕上がった婚姻届受理証明書を窓口から差し出し、冷静なトーンで告げた。
「手続きが完了いたしました。こちらの証明書をお持ちになり、ロビー奥の記念撮影コーナーをご利用ください。ちょうど順番待ちもございませんよ」
証明書を受け取った英嗣は、私の顔をじっと見つめてきた。わずかでも傷ついた様子を探ろうと必死なのだろうが、無駄なことだ。
私はただ静かに視線を返し、親切そうに言葉を添えた。
「せっかくの記念撮影ですから、もっと嬉しそうに笑ってくださいね。ご結婚されたのですから」
しばらくして撮影を終えた二人は、わざわざカウンターまで戻り、スマートフォンの画面をこれ見よがしに見せつけてきた。
画面の中では、咲智子が英嗣の腕にしがみつき、得意げな満面の笑みを浮かべている。
その姿を一瞥し、私は一切の揺らぎのない声で告げた。
「おめでとうございます。どうぞ末永くお幸せに」
第2話
玄関のドアを開けると、冷え切った暗闇が広がっていた。
たたきから英嗣の靴は消え、私が綺麗に揃えておいた彼のルームスリッパだけが、ぽつんと残されている。
今夜、彼が帰ってくることはない。
パンプスを脱ぎ捨て、明かりも点けずにソファへまっすぐ向かって腰を沈めた。
暗闇が部屋にある彼にまつわる痕跡をすべて覆い隠してくれたおかげで、ようやく一息つけた気がした。
手探りでスマートフォンを取り出し、画面のロックを解除する。
インスタグラムの最新の更新通知が、やけに目に刺さった。
開いた先は、英嗣が30分前ににアップした投稿だった。
ずらりと並んだ数枚の写真のどれもが、彼と咲智子の親密な姿を収めていた。
レストランでお互いにケーキを食べさせ合う姿。川沿いで夜風に吹かれながら弾けるように笑い合う姿。
極めつけは、婚姻届受理証明書をカメラに向けて掲げ、咲智子が幸せそうに英嗣の肩へ頭をもたれさせている1枚だった。
写真の中の二人は、昼間に市役所で浮かべていた顔よりもずっと晴れやかで、満ち足りた笑顔を覗かせている。
添えられた言葉は、たったの1行。
【最高の罰ゲーム。冗談を本物にしちゃった】
下にはすでに100件以上のコメントといいねが群がっていた。
【マジかよ!英嗣、本気だったのか!おめでとう!】
【やっぱりお前ら最高にお似合いだよ!最初からこうなるべきだったんだ!】
【結婚おめでとう!披露宴いつ呼んでくれるの?】
咲智子がその下に、見せびらかすような調子で返信をつけている。
【えへへ、みんなありがとー!近いうちにご飯奢るから待っててね】
表情ひとつ変えずに画面をスクロールし続ける。まるで自分とは無関係な三流の茶番劇を眺めている気分だった。
不意にスマートフォンが震え、共通の友人からメッセージが届く。
【英嗣と咲智子のアレ、どういうこと?2人……別れちゃったの?】
どう返信すべきか指を止めていると、今度は母からの着信が画面を覆った。通話ボタンを押すなり、焦りきった声が耳に飛び込んでくる。
「実乃里、英嗣さんの投稿見たわよ!あれ、どういうことなの?喧嘩でもしたの?なんであの子と……」
「お母さん」
言葉を遮った私の声は、自分でも驚くほど落ち着き払っていて、どこか他人の声のようだった。
「私たち、別れたの」
受話器の向こうが数秒沈黙した後、怒りを押し殺した母の声が漏れ聞こえてくる。
「いつから?なんで今まで私たちに黙ってたのよ……まさか、あの咲智子って子が原因なの?」
「ううん、なんでもないの」
小さく息を漏らして答える。
「ただ、合わなくなっただけだから。これからはもう、彼の名前は出さないで」
あんな汚らわしくて馬鹿げた内情を話して、親を不安にさせたくはなかった。
簡単に母をなだめて通話を切ると、まるで世界中から一切の音が失われたかのような静寂が落ちた。
立ち上がり、リビングの明かりをすべて点ける。
刺すような光が部屋中を満たし、この5年間で積み重ねてきた関係にいかに無様な綻びがあったかを、容赦なく照らし出していた。
寝室へ向かい、クローゼットの奥からスーツケースを引きずり出す。
私は1つひとつ、自分の持ち物を淡々と詰め込み始めた。
第3話
サイドテーブルの片付けに取り掛かったとき、2人で選んだお揃いのペアマグカップが目に留まった。
迷うことなく自分の分だけを手に取り、スーツケースの底へ収める。
残された英嗣のカップは、これから咲智子と2人で使えばいい。
荷造りはあっけなく終わった。
クローゼットの半分はぽっかりと空き、ドレッサーの上もがらんとして何一つ残っていない。
この部屋から、私にまつわる痕跡が一つひとつ綺麗さっぱり消し去られていく。
再び画面が明滅し、英嗣からのメッセージが届いた。
【実乃里、変に勘ぐるなよ。ダチ連中と外で祝杯あげてるだけだから、戻るのは遅くなる。昼間のお前があまりにも平然としてたからさ、本当に何とも思ってないのかと焦ったよ。明日、咲智子と離婚届を出したらちゃんと説明するから】
並んだ文字をただ見つめ、返信は打たなかった。
電話の1本すら寄越そうともしない男の言い訳など、読む価値もない。
LINEを開き、躊躇なく彼を友だちリストから削除した。
視界から雑音が消え失せ、静けさが戻ってくる。
スーツケースのハンドルを握り、玄関へと向かう途中で、かつて生涯の居場所だと信じていた空間を、最後にもう1度だけ振り返った。
ここに置かれた家具や小物のすべてを、私が一つひとつ手をかけて整えてきた。
リビングの壁に掛けられた、個展で一緒に見つけた抽象画。
ベランダで蕾を膨らませているクチナシの鉢植え。
書斎に置かれた、首の痛みを和らげてあげたくて吟味を重ねて購入した彼のワークチェア。
引っ越してきたばかりの頃、何もないフローリングの上で、英嗣は私を抱き上げて嬉しそうに回っていた。
「実乃里、今日からここが2人の家だ。一生涯、ずっと一緒の家だからな」
あの時の私は、その言葉を露ほども疑わずに信じ切っていた。
けれど月日が流れるにつれ、この部屋には頻繁にもう一人の痕跡が入り込むようになった。
咲智子の甲高い笑い声。
洗面台に置き去りにされたヘアゴム。
冷蔵庫の棚を占領する、彼女好みのフルーツ炭酸水。
私が初めて不満を口にしたのは、交際3周年の記念日だった。
予約したレストランでプレゼントを膝に乗せ、閉店時間まで待ち続けた末に、英嗣からかかってきた1本の電話。
「実乃里、ごめん。今日咲智子が失恋して荒れててさ。一人にしておくわけにいかないんだ」
受話器の奥から、泣きじゃくる咲智子の甘えた声が微かに響いていた。
「英嗣……私、邪魔しちゃったよね?全部私のせいだ、ごめんね……」
冷めきった料理を見つめながら、私は「いいよ、そばにいてあげて」と答えた。
自分に言い聞かせていた。
物分かりのいい恋人でいよう、彼の言う「仲間との絆」を受け止めてあげよう、と。
けれど、私のそんな歩み寄りは、ただ相手をつけあがらせただけだった。
去年の冬、ひどい風邪をこじらせ、真夜中に39度まで熱が跳ね上がって全身の震えが止まらなくなった夜のことだ。
病院へ連れて行ってほしくて、すがる思いで彼に電話をかけた。
繋がった先から聞こえてきたのは、耳を塞ぎたくなるほど騒がしいカラオケの歌声だった。
「実乃里?どうした?」
面倒くさそうな彼の声。
「熱が高くて動けないの。すごく苦しいから、お願い、戻ってきて病院に連れて行ってくれないかな」
数秒の沈黙の後、酒の勢いに甘えを含ませた咲智子の声が割り込んできた。
「実乃里さん、ちょっとは空気読んでよ。今日私の誕生日パーティーだよ?英嗣はわざわざ私のお祝いに来てくれてるんだから、たかが風邪くらいで呼び戻さないでくれる?」
電話の向こうからドッと上がる下品な囃し立て。
再び電話を取り戻した英嗣は、いらだちを隠そうともしない素っ気ない口調で吐き捨てた。
「大人なんだから自分でタクシー呼んで行けよ。こっちも手が離せないんだ。咲智子も仲間もみんな揃ってるんだから、我儘言って困らせるな」
通話は一方的に切られた。
第4話
あの未明、救急外来の凍てついた長椅子に1人で身を沈め、壁掛け時計の針が1秒1秒と時を刻むのを見つめるうちに、私の心もまた少しずつ、確実に冷え切っていった。
あの日を境に思い知らされた。
私と英嗣の間には、決して避けては通れない咲智子という壁が立ちはだかっていたのだと。
私が重ねてきた我慢も歩み寄りも、彼らの目には当たり前のこととしてしか映っていなかった。
苦い記憶の潮が引いていく。
部屋のドアを閉め、深夜の刺すような冷たい風が頬を打つその時まで、英嗣からメッセージの1通も、電話の1本すら届くことはなかった。
彼と咲智子の世界において、私という婚約者は、とうの昔にどうでもいい、取るに足らない存在へと成り下がっていたのだろう。
スーツケースを引き、1度も振り返ることなく歩き出した。
さようなら、英嗣。
どうぞ、お似合いの新婚生活をお楽しみください。
*
翌朝。
市役所の窓口業務が始まるやいなや、英嗣と咲智子が姿を現した。
2人は身なりもろくに整えておらず、髪には寝癖がついたまま。
昨夜の狂騒を引きずった気だるさを滲ませながらも、その目元には隠しきれない得意げな色が浮かんでいた。
英嗣は真新しい離婚届を私のカウンターへ叩きつけるように放り投げ、まるで取るに足らない雑用でも言いつけるかのように、軽薄な調子で言い放った。
「実乃里、手続き頼むよ。離婚しに来たから」
彼が身を乗り出した拍子に、首筋の横にある毒々しいほど紅い痕がはっきりと見えた。
昨夜つけられたばかりの生々しいキスマーク。
自らの所有権を高らかに宣言する刻印そのものだ。
私の胸には、さざ波ひとつ立たなかった。
「実乃里さん、昨日は本当にありがとね」
咲智子は甘えた笑い声を漏らし、あてつけのように指先で彼の首筋の痕をなぞってみせる。
「英嗣の言う通り、罰ゲームって結構スリルがあって楽しかったよ」
安っぽい挑発など歯牙にもかけず、私は離婚届を引き寄せて淡々と手続きに取り掛かった。
「ご本人様確認書類のご提示をお願いいたします」
事務的な声で促す。
英嗣はいらだちを隠そうともせず、眉をひそめながら財布から2枚のマイナンバーカードを乱雑に抜き取って寄越した。
「手早く頼むよ。午後からも予定があるんだから」
受け取ったカードを手元に置き、落ち着いた手つきでキーボードを叩いて2人の戸籍情報を画面に呼び出す。
モニターを見つめる視線の奥に、昨日彼らが撮影したあの記念写真が、まざまざと脳裏に重なった。
満面の笑みを浮かべる咲智子と、どこか引きつってぎこちない表情の英嗣。
「内容の確認が取れました」
顔を上げ、窓口用の完璧な営業スマイルを作る。
英嗣は安堵したように肩の力を抜いた。これで面倒な用件もすぐに片付くと踏んだのだろう。
咲智子もまた服の裾を直し、晴れて自由の身に戻る準備を整えていた。
だが、私は離婚届を受理する手続きには入らなかった。
右手側の引き出しから、庁内に届いたばかりの書類を1枚、落ち着いた手つきで取り出す。
そしてカウンターの上に広げ、2人の目の前へとすっと滑らせた。
紙面の最上部には、太いゴシック体でひときわ目を引く題名が印字されている。
――【少子化対策・円満婚姻継続支援法】
英嗣の顔の笑みが凍りついた。
「……なんだよ、これ」
鼻梁にかかる細いフレームの眼鏡を指先で押し上げ、レンズの奥から冷然と2人を見据えた。
「申し訳ございません、藤堂様、奥様」
静まり返ったロビーに、私の通る声が静かに、だがはっきりと響き渡る。
「国より通達された最新の法律に基づき、婚姻成立から6か月に満たない場合の離婚届につきましては、6か月間の冷却期間が義務付けられることとなりました」